月下の胡蝶

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お題《入道雲》


瞬間を切りとる。


それは大切な物語を忘れないように、カメラという箱でカタチに残すこと。人の記憶はどうしたって朧気になってゆくから、露となって消えてしまう前に。


そんな想いを抱きながら今日もカメラを上に向ける。ソーダ水の海に浮かぶバニラアイスの塊のような雲を、カメラにおさめる。


その他にも風景はたくさんある。


民家の庭先に咲く朝顔、水を張った木の桶に浸かった大きな西瓜(すいか)とお茶やジュースの缶、鮮やかな美しさをたたえた金魚、赤赤と続く提灯と人の波――亡き親友であるカケルに、見せるために。



『お前の写真、なんかあったかくて好きだわ。技術も大切だけど、一番大切なのは心だってことちゃんと理解してて尊敬する』



カケルとはじめて買ったカメラで、今も撮り続けている日常の風景を。



カケルが、大好きだって笑顔咲いたこの季節を。



6/29/2022, 11:44:57 AM