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濃藍色の様な短髪
凛とした佇まいの長身
物静かで期待を諦めを映した表情
ひかりの加減で、銀にも金にも見えるその瞳

きっかけといえば、その美しい姿
……所謂外見というヤツではあるが、一目惚れ
逃げ場探しに寄り付かない山の奥の奥に辿り着いた、
影に塗れて汚れた子供と
光に照らされた美麗な大人
そんなお伽噺の様な、始まりである。



大人は人が嫌いだった。
「異端」な自分を多勢で追い回す存在だったから。
過去を想起したくない程度に、大人にとっては
窮屈で、苦痛で、不快で、醜悪な記憶しかなかった。

でも、その子供…「純真な子」に遭遇した事は
唯一無二の、生涯初めての困惑の連続だったと言える

大人は遠回しに出てけと子供へ脅してみたものの、
何故か次の日からも欠かさず子供はやって来る。
「きれいな人さんは、なんて名前なんですか?」
暢気にぽやぽや見つめて子供は問うてくる。

いくら冷たく態度と声で「二度と来るな」と表しても
子供は自分を見つめて目を離そうせず
毎日来ては自分を見つめ、月が少し傾いた頃に
未練たらたらの顔のまま「また明日!」と言う。



子供に出会ってからは振り回されてばかりだった。
なんせ「人」とマトモな関わりは、一生縁の無い
ものだった筈で。

自分と似た「異端」…同じ他の魔女よりも
突出していた所為なのか年を取る事もなく、
ただ時の止まった姿と、自然すら上回る異能故に
追い回され、疎まれ、恐怖され、奇異の目で見られ

それがどうだ。初めこそ多数の存在と同じ様に
奇異の目を向けていたと思えば、
へにゃりと気の抜けた顔だったり、ただ多くを語らず
にこにこと緩んだ顔で見てくる。
昨日なんかは唐突に野花を突き出して来たりと
全くもって不可解だ。

だが、そんな日々も終了だ。
数日警戒していたが、子供は周囲に触れ回った様子は
無い。とは言え、大人は子供に姿を見られている。
異端な自分は定期的に場所を変えないと
怪しまれて、知らない内に多勢で追い立てられる。

特に最近子供に対して「妙な」感覚を感じる様に
なった大人は、今日こそは出て行こうか。
と思いはしていたが、子供の顔を思い出しては
悶々としたまま、月の傾きを眺めて佇んでいた。



…さて、
この「大人」は、一般的な意味の大人より
自身も理解し得ていない、大分未熟な所があった。
それは、大人が異端であった事。
その子供の様に、接して来た人間が居なかった事。
『人間社会』に溶け込んで居なかった事。


だから、

子供の体に青紫の痣が増えていた理由も

月が中天に登っても尚出歩いている事実も

花を渡した次の夜から来なくなった真相も

「体だけ大きく」育った美しい魔女は、
何一つとして、知らなかった。








「成る程、そんな事になってたんっすね…」

「……っ……っっっ……」

「ちょ、腹っ、いっっ、痛いですって!」

「………っっっ!!!……!…………っっっ!!!」

「あのっ、折角の晴天がおどろおどろしい雲に
覆われたんっすけど!?落ち着いてくださいって!」

稲穂の様な金髪
あわあわと情けない大男
爽やかで明るさを秘めていた表情で
ひかりに照らされ、血の色が現れている紅の瞳

きっかけといえば、懐かしきこの山
……向こうは人の気すら知らず、満面の笑顔
苦い過去ではあるが、諦めきれずに赴いた山の奥の奥
光に照らされ成長した子供と
影に塗れた過去から大泣きの大人
そんな情けない様な、彼らの「再開」である




子供は夜が嫌いだった。
「朝」を迎えるまで逃げ場のない世界だったから。
多くを語りたくない程度に、子供にとっては
狭苦しくて、痛くて、辛くて、嫌な事しかなかった。

その先に待っていたのが、この月夜の出逢いだった。
唯一無二の、一生に残る幸運と語っても良いのだろう

子供はぽーっとその美しい大人に見惚れていたが、
見られていた大人の方は、むっと眉を寄せ
「子供が出歩く場所じゃない。帰れ」
これまた涼やかで美しい声で言った。

その声にも子供は惹かれてしまったので
先程と比にならない程に、熱烈に見つめてしまったが
ビュウと前触れもなく突風が吹き付けてきて、
子供が目を閉じた瞬きの間に大人は消えた。


「きれいな人」との出逢いは、夢のような短さで。
でも、ばくばくと高鳴る鼓動は、外の冷たい風は真実である証左の筈で。

ただもう一度逢いたいから。

その理由で、子供は明日も生きる事を決意した。














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………おや、「再開」ではなく「結末」…
じゃないのかって?
若人の恋の行方を間違っても「結末」だなんて
締めくくったら、馬に蹴り上げられて空の果てまで
吹き飛ばされてしまうよ?

どの世界でも、これからなのに
「勝手に終わらせないで!」
というのが当人達の本音ってやつだからね!
以上、『僕』からでした〜邪魔したね⭐︎

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11/28/2022, 5:43:39 PM