厳冬極寒の雪国では、ときに自室で白い吐息を観測できるとか、特に廊下で顕著とか。
温かい鍋が欲しくなるトリビアは置いといて、今回のおはなしのはじまり、はじまり。
実は前々回投稿分あたりのおはなしで、酷い目にあったドラゴンがおりまして、
というのもドラゴンが勤めている「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織で、
難民シェルターの年末電飾プランを電気設備のカモシカ(ビジネスネーム)から紹介されまして、
ハイさっそくジオラマで点火!
なんてやっておったところ、
まさかの夜間の白色LEDハイビームもまだ暗いほどの暴力的光量、破壊的光度の酷い光が
バン!! ビカーーーッ!!
ドラゴンの目をメガーメガーしてしまったのです。
本当に、ドラゴンには、酷い災難だったのです。
で、今回のお題が「白い吐息」とのことなので
このドラゴン、また災難に遭ってもらいます。
泣き面に蜂とは、このことなのです。
さて。
『ああ……ああ、エラい目に遭った』
ドラゴンは、ようやっと十分に回復してきた目をクシクシと、こすりながら言いました。
ドラゴンが勤務している管理局の、局内に整備されている難民シェルターの、草原エリアは良い天気。
人工太陽が適度適切な温度と光度、光量で、ドラゴンを温めて、なぐさめてくれます。
『まったく今年は災難だ。ヤクドシだ。
年のはじめにカナリアのやつの、アーモンド型花粉爆弾を誤食する事故を食らって、
さっきはカモシカのやつの、ジオラマで目が、1時間、いや1時間半?2時間……?』
オハライとやらでも、申請するべきなのか?
ちゃんと経費で落ちるのか?
とぼとぼとぼ、のしのしのし、ドラゴンは難民シェルターの草原エリアから、少し外れた小さな林に、昼寝のために入ってゆきました。
ところで世の中には
潰すと白い吐息のようなものを出す
ホコリタケだかケムリダケなるものが
事実として存在するそうですね?
(お題回収)
『ん?』
ピタッ。ドラゴンが林の中で、止まりました。
『なんだ。なんのニオイだ』
このドラゴンは、ドラゴンなので、嗅覚や聴覚、視覚等々が、とっても優れておりました。
『キノコ?』
そのドラゴンの本能を、直接ピピっと刺激する、とても良い香りに気付いたのです。
俺は、この香りを摂取しなければならない。
ドラゴンは本能に従って、香りを辿りました。
『キノコだ』
それは、どこか新しい滅亡世界からこぼれ落ちて、難民シェルターに持ってこられて植えられた、新しくて不思議なキノコでした。
冬にパッと群生を作るようです。
抹茶オレ色で大きくて、マッシュルームのようなキノコの正体は、ドラゴンの記憶にありません。
でもドラゴンの本能は、この抹茶オレマーブルキノコを食うべきだと命じています。
『ニオイは、良いニオイだ』
くんかくんか、クシュン!くんくん。
ドラゴンは本能に従って、抹茶オレマーブルマッシュルームモドキに鼻を近づけて、くしゃみして、
そして一気にガブッ!
群生の抹茶オレマーブルマッシュルームモドキのうちの、最も大きく最もカタチの良いものを、
ひとくちで食べて、
一瞬ローストしたナッツのような風味を感じて、
その一瞬後、すぐに、 ぼふん!!
食べたキノコが破裂したことに、気付きました。
「ぎゃお?」
どうやらこのキノコ、成長しきって「準備ができた」ところで皮が破けるようなチカラが加わると、
まさしくケムリダケやホコリタケのように、白い胞子をドチャクソ大量に噴出ようなのです。
「ぎゃお、ぎゃおう、ぎゃお?」
モフモフ、もくもく。
ドラゴンの鼻からも、口からも、抹茶オレマーブル巨大マッシュルームモドキの白い胞子がぼふん。
白い吐息を断続的に出しているように、次から次へと出てきます。
「ぎゃ……」
災難だ。ああ。ああ、まったく災難だ。
鼻と口から出てくる胞子の白い吐息は、1分くらいでやっと落ち着きまして、
「ナッツ」に詳しいドラゴンの同僚によれば、キノコにも胞子にも毒は無く、むしろ良い胞子なので、
安心して良いとのことですが、
本来は胞子が作られる前の未熟なものを、ナマにせよソテーにせよ、食うのが正解だとか。
そんなもん知らん。
ドラゴンは大きなため息を吐いて、本気でヤクバライなる儀式を、申請しようか考えたとさ。
白い吐息のおはなしでした。 おしまい。
12/8/2025, 4:17:46 AM