ゆう

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「太陽っていつか燃え尽きてなくなるんだってぇ。」
友達の空美が独特の間延びした喋り方で、
唐突にそんなことを言い出した。

彼女はガーリーでふわふわした見た目からは想像もつかないのだが
科学に興味があり、Newtonを毎号読んでいるような女の子だ。
でも理系というわけではなく、数学が苦手だったりする。

どちらかというと文系寄りで、想像力豊かでいつもとりとめもない妄想をしているような女の子だった。
世の中の不思議なことが科学で説明できてしまうことが彼女には面白く、興味を惹かれるみたいだった。

空美は続けた。
「太陽ってめっちゃでっかいじゃん。」
「でも燃え続けててどんどん大きくなってるんだって。」
「しかもどんどん熱くなってて、5億年後には地球の海水が蒸発しちゃうんだってぇ。」
「それで50億年後には地球は膨張した太陽に飲み込まれちゃうんだって。」
「そしたら地球に住めなくなっちゃうよ。」
「こまっちゃうよねぇ~」

困るどころではないと思うのだが、彼女の危機感ない喋り方がかわいかった。
私はどちらかというと几帳面で、神経質で、いつも些細なことが気になったり、勝手に傷ついたりする。
自分で言うのもなんだが、繊細なタイプだと思う。
そんな私にとって空美みたいな子は、ほっと息をついて張り詰めた神経を休ませてくれる癒しの存在なのだった。

「その頃には生きてないでしょw」
私は突っ込んだ。
それでも何回も生まれ変わって、人生何周もして、また私の意識があるときと、たまたま地球が飲み込まれるタイミングとが重なったらやだな。
なんて、起こりうるかもわからないことを心配している自分が滑稽だった。

「だよね~」
危機感ない喋り方で空美は言った。
空美の洗いたての真っ白でふわふわした制服がかわいかった。
いい匂いがした。

地球が飲み込まれる瞬間も空美と一緒だったら怖くないかも。
私はそんなことを思った。

能天気で太陽みたいな女の子。
空美と一緒なら。



『太陽』 おわり

8/7/2024, 9:54:34 AM