『言葉にできない』
本当に思っていることは、言葉にできないことが多くある。
言葉というのは、どこか嘘くさい。「好き」と言った瞬間に、その気持ちは輪郭を持ちすぎてしまう。実際の感情はもっと曖昧で、もっと揺れていて、「好き」という言葉が纏う重さとも、軽さとも、少しずれている。
だから私はいつも、何かを伝えようとするたびに、言葉の手前で立ち止まる。これで合っているか、と。この言葉はあの感覚を裏切らないか、と。
でも考えてみれば、言葉にできないということは、それだけ本物だということかもしれない。言葉になった瞬間、感情は固まる。瓶に詰められる。そしてどんなに正確な言葉を選んでも、瓶の外に溢れたものが、いちばん大切だったりする。
言葉にできないまま、誰かの隣に座っていたことがある。何も言わなかったけれど、何かが確かにそこにあった。それで十分だったと、今は思う。
言葉にできないことは、失われたのではない。ただ、言葉よりも深いところに、静かに沈んでいるだけだ。
4/11/2026, 5:37:59 PM