なんにもない床を見ると猫に触りたくなる。
一昨年の夏まで、そこには猫がいた。丸くて大きい猫用のクッションに丸まって眠っていた。ときどき起きて、水を飲んだりトイレの砂を掻いたり、突然こっちを見て「なぅ」と鳴いたりしていた。
仕事がいやになるとデスクを離れて猫の寝顔を見た。彼が起きているときはすべすべとした手触りの腿や背中やおでこを撫でた。
だけど彼はもういない。
いまだにすべすべの毛の手触りが恋しくなる。なにもない空間を、猫の輪郭を思い出して撫でたりする。飾ってある彼の写真に「君は本当にかわいいね」と話しかけたりする。
ふと「会いたいなぁ」と言って、虚しいことを言ってしまったなと、すこし後ろめたくなる。
/君に会いたくて
1/20/2023, 8:35:42 AM