最近、外が暗くなると恐ろしい気持ちでいっぱいになる。
なにか怖い出来事があったわけではない。ただ、あたたかい布団にくるまって、あなたのそばで朝焼けを待つだけの時間が、怖くなった。
「だーかーらー、そんなに心配しなくても平気なんだってば」
「でも……」
「もーっ、私の頑丈さはあんたが一番知ってるでしょ!『でも』も『なに』もない。てか、そんなに心配されると逆に不安になるんだけど!?」
「う、それもそうだね……」
私は知っている。夜が訪れる度に魘されるあなたを見ている。私の知らないどこかで、私の知らないなにかを恐れ、逃れようともがき、時に反撃しようと声をあげるあなたを。そんなあなたの姿が脳裏から離れないの。
──そんなことを言えばきっと、あなたはもっと気丈に振る舞う。生活を共にする私にすらもその傷を隠してしまうだろう。
だからこれ以上深くは語らない。語れない。あなたを傷つけたいわけじゃないから。
なんだか胸のあたりが重たくなって、自然と背中が丸まる。ほのかな沈黙がふたりを包んだ。
「……あー、まあ、あれだ。その……」
あなたが頭を掻きながらなにかを伝えようと口を開いて、しかし気まずそうにそれを閉じた。
モゴモゴと口元だけで喋ろうとするのは、言いたいことを我慢しようとするときのあなたの癖だ。
「なあに?」
「……………心配してくれてありがとうね」
あと、言い方きつくなってゴメン。
とてもちいさな声で呟くように言うあなた。
「……ううん。私こそごめんなさい」
すっ、と小指を差し出すと、あなたもそれに小指を絡める。仲直りの証。
今夜も戦うあなたを、私は見守っているよ。あなたが助けを求めたときに誰よりも早く駆けつけられるように、誰よりも近くであなたを見守り続けよう。だから、ひとりで抱え込むのが辛くなったら、誰かに寄りかかりたくなったら、いつでも呼んでちょうだいね。ひとの怯えなんて気にしないで。
私に、あなたを守らせて。
▶脳裏 #37
11/9/2023, 10:54:44 AM