ィヨイヨイヨイヨイリンリンリンリリーン

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またいつか(久々すぎ。過去にカラフルをテーマにした作品の続編になるよ)

 雪の照り返しが眩しい朝だった。
 穏やかな風と吊るした肉、コトコトと煮込むシチー。何気ない穏やかに永遠と続く冬の光景であり、雪解けという言葉を知るのはいつだろうと凍てついた心は待つ事だけを覚えてしまっていた。
 一杯のスープをよそい、テーブルに置いた。
 さて、私には同居人がいる。とはいえど今日でその同居もおしまいなのだが。
 トントントンと、音のないのに足音がした気がして振り返る。

「ラーノチカ、終わった」

 勝利の象徴のような輝きを持つ黄金髪の相棒。
 昨日までは膝まで届くほど長髪だったが、彼女自身から頼まれて私が散髪した。今の彼女は、端から見たら男と見紛うこともあるだろう。
 そんな彼女は無愛想な性格や適当なところがあり、秘密も多くて私が知るのはほんの僅か。しかし誰もが口を揃えて、卓越した狙撃手だと囁く。
 きっちりとまとめた荷物は、決して彼女が一日や二日の狩りに行って帰ってくるような単純な戦いに赴くわけではないことを物語っている。
 愛銃は1丁のリーエンフィールド、ただそれだけだった。

「……シャルロット、本当に行くのね」

 何度も繰り返した言葉が溢れる。
 ただ、いつもと同じだった。彼女は静かに首肯し、伏せ目がちに呟くのだ。

「父の死の真相を知らないといけないから」

 彼女の瞳に色というものが消えたというのは、その時だという。
 曰く、その愛銃も父の形見らしい。十四歳の時、雪が吹き荒ぶ中を狐が咥えてきたらしい。初め聞いたときはとんだ御伽かと思ったが、真剣な表情とグリップに残った小動物の噛み跡を見て信じるほかなくなった。
 私が丹精込めた一杯のスープを、彼女はいつものようにグイッと飲み干した。
 一瞬だけ満足そうに頬を緩ませ、すぐに仏頂面に戻る。長銃を肩に背負い、そのまま彼女は玄関に向かった。
 慌てて追いかけるが、神妙な顔つきの彼女になんと声をかければいいのか分からなかった。

「……ラーノチカ、私は黄金の城に行くよ。だから――」

「さようならなんて、言わないでよ」

「ラーノチカ?」

 呆然とした彼女を抱きしめる。
 ひんやりした上着に包まれた小さい彼女が、理由もわからず抱きしめ返した。

「こういうときはこういうの――またいつか、って」

「……うん、またいつか」

7/22/2025, 1:55:53 PM