ゴーン ゴーン ゴーン
鐘の音がなる
君はまだ来ない。
良かったと少し安心したけれど、君がいないとつまらないと言う事実は変わらないし、ここにいる以上君を待っている事になるのだから、本当は来てほしいのかもしれない。やはり僕は少し自分勝手らしい。
でも君は危なっかしいから、道を間違えてこっちに来ちゃった!なんて事があるかもしれないから安心できないし、見張っているだけと言う事にしておこうか。
ふと気を抜くと讃美歌が耳に入ってきてしまうから、イヤホンの音量を上げた。
この類の曲はどうも好きになれなかったけど、君が僕のために歌ってくれたあの曲は好きだよ。
なんだっけ、十字架にかかったイエスは〜みたいなやつ。僕、教会に行ってたけどあんまりイエス様に信仰心っていうものを持てなかったんだ。
そりゃイエス様は今も生きているっていうのは信じてるつもりだけど、心の中では
そんな超次元的な事ができるのか?
とか、
神様って本当にいるのか?
とか人間らしい疑問が次々に出てきて、何かわからないものを信仰することが怖いと思っちゃったからさ。
でも君は違ったよね真剣にお祈りを捧げて、集金だって毎週してたし。不意に笑った時の笑顔も向日葵みたいに輝いてたよ。そんな君を見て、仲良くなりたいと思ったのと同時に、僕のものにしたいと思っちゃったから
僕が死んだんだ。みんなからは想像通りってところ?
教会終わりに君をストーキングしてたらトラックに跳ねられて死んじゃったよ。即死だった、と思う。飛び出しってやつで100僕が悪いんだけどね。
僕が跳ねられた事に気づいた君は僕に駆け寄って必死にお祈りしてたよね。お葬式の時に歌ってくれた讃美歌も僕に届いてた。嬉しかったよ。
でも、君は最近教会に来るようになった女の子と楽しく遊んでるらしいじゃん。それを僕はどうも気に食わない。
もっと僕の死を引きずってくれると思ってたから、
だって君には僕しかいないと思ってたから、
すごい人見知りだと思ってたから、
そんな君しか僕は好きじゃなかったから。
最初は君も死んで僕と同じところに来ればいいと思った。幸運な事に僕がきた場所は天国らしいから。
でも今は君にはきてほしくない。
こんな薄汚れたやつが天国にいる現実を突きつけられた君はイエス様を信仰していたときの君じゃなくなるような気がするから。
でも知らないうちに僕は君を少し縛っていたという事に最近気づいた。
君、段々僕に似てきてるよね?
信仰心、薄れてきてるよね?
それはやめてほしい。
僕が死んだ意味がなくなってしまうじゃないか。
ゴーン ゴーン ゴーン
鐘の音が鳴る
君は来てしまった。
天国という名の支配がない無法地帯に。
絶対変になってる。物語描ける人尊敬します。
8/6/2024, 1:52:05 AM