「えー。貴女に『伝えたい』ことがあります」
「はい? なにを改まって……まぁ、はい。どうぞ」
「俺と結婚してください」
「……けっこん」
「はい。結婚、です」
「結婚。私と……タクミ?」
「指差して確認しなくても。いまこのテーブルには、俺とアヤしかいないんですけどね」
「っ、プロポーズじゃん」
「はい、そうなります」
「プロポーズを、いま……ここ? 『この場所で』?」
「っ、……はい」
「いつものトコでいっかー、で決めた居酒屋で。生で乾杯して二杯目も飲んで、こうして三杯目に口つけてる、このタイミングで」
「っ、えーと、いろいろ考えたのですが。自分の精神的負担の軽減を優先したら、こうなってしまいました。返す言葉もございません」
「あー違う。責めてるわけじゃなくて……いつもの店で肩の力抜いて、でも二、三杯ひっかけてからじゃないとダメだった、と」
「うん……はい、その通りです」
「それを聞く私は、といえば。ホッケの骨をこうやって、ベロベロッと剥がしたところ……」
「あー……ごめん、タイミング……」
「や、責めてるわけじゃなくてね、ホッケをどう攻略しようか考えてたから、ちょっと思考が追いつかないって言うか」
「何気に俺のことは、冷静に分析してんのに」
「うん、そうなんだけど。自分でもよくわからない、意外と動揺してるのかな」
「……とりあえず。ホッケ、食ってよ」
「……うん、そうする。タクミ、このヘンのトコ、ガッツリ取っちゃって」
「じゃ、遠慮なく……っていきたいトコだけど、よく考えたらそれどころじゃねーわ」
「だよねぇ。私、まだ返事してないし」
「返事……」
「でも、ホッケが冷めていくのも、放って置けないし」
「ホッケ……」
「って、アレ? 私ってやっぱ、タクミのこと、責めたいのかな?」
「あああ……タイミング的に、最悪だったよな……」
「フフッ、そんな、頭抱えなくたって。でもこれって、一生カラカえるネタになりそうじゃない?」
「一生かよ。……っ、一生? 」
2/13/2026, 9:03:52 AM