トト

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スマイル0円。

いや、時給発生してるもん。

笑いは「緊張の緩和」であると喝破した落語家が昔いた。たしかに爆笑を欲しいままにしていた。

だが、何故か私は彼の落語があまり好きにはなれなかった。ずっと違和感を感じていた。

桂枝雀は師匠の米朝も認める実力派の噺家であったが、私は彼の中に狂気を感じていたのだろうと思う。

落語好きの私だったが、生前の彼の高座は生で聞いた事はない。

彼はやがて、唐突に旅立ってしまった。落語界は大きな宝物を失って、関係者もファンもただ呆然とした。

彼の死後、歌舞伎座で追悼公演が開かれた。米朝一門と、柳家小三治が出演し、トリは枝雀の『代書屋』をスクリーン上映した。

生前は少しも足が向かなかったのに、何故か私もチケットを買っていた。

スクリーンに投影された枝雀に、歌舞伎座の客は、大爆笑していた。本当に大爆笑だった。

私も泣きながら笑っていた。

ちきしょうめ。



2/8/2024, 5:32:36 PM