NoName14

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いつも、来ていたお客さんが
ふと顔を見せなくなった。

声は、しわがれて
目元には、深い笑い皺が
印象的だった。

ハンチング帽と、煙草の匂い。

病気を患っているのは
知っていたが、いつも相変わらずな
人だった。

亡くなったと、聞いたときは
ああ…そうかという気持ちしかなかった。

その日の帰り道は
真っ赤な夕焼けと影を成す木々が
まるでシルエットのように
物悲しく、綺麗だった。

ハンチング帽と…煙草の匂い…

それほど吸いたい気持ちでも
なかったけれど
私は、煙草に火をつけ
茜色に染まる空にゆっくりと
煙を吐いた。


【お題:哀愁をそそる】

11/4/2023, 2:21:09 PM