『はなればなれ』2023.11.16
周りが進路についてあれこれ悩んでいるこの時期。俺はどちらかというと、余裕をかまして見ていた。
余裕はないことはないのだが、それでも他の連中よりは余裕である。
ツルんでいるグループの奴らとの付き合いはめっきり減った。それもそうだ、不良といえど夢を抱いているやつらばかりなので、その準備に追われているのだ。
俺は高校を卒業すると、調理師学校に通うことになっている。将来は両親の経営するレストランに就職するからだ。
一番仲のいいアイツは就職をするらしい。普段から口にしているガムに並々ならぬ情熱を注いでいるアイツは、まったく新しいガムを作るのだと息巻いている。くわえて「三食お菓子」というくらいお菓子も好きなので、製菓会社に行くのだとか。
食品を扱うという意味では似通っている俺たちは、あくまで将来のための研究として、スイーツの食べ放題に進学就職の準備そっちのけで通っている。
目の前に美味そうにケーキを平らげているヤツをみると、高校を卒業するとはなればなれになってしまうことが、嘘のように思える。
就職と進学。まったく違う道を歩むのだから、おいそれと会うこともなくなるだろう。
それはそれで寂しい気もするが、コイツのことだから何かにつけて会おうと言ってくるだろう。素直なコイツが少し羨ましい。
高校を出たらそのまま疎遠になると聞くが、なんとなくコイツとはそうなりたくないと思った。
11/16/2023, 11:58:30 AM