Ryu

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ひとりぼっちのあなたへ。

いつか話しかけようと思ってた。
でも出来なかった。その勇気がなかった。
私の次に、イジメのターゲットにされたあなた。
その苦しみを誰よりも分かっているはずなのに、あなたに声をかけることすら出来なかった。
また自分が、あんな毎日を送ることになるのが怖かったから。
このまま平穏な日々が続くことを、心から願っていたから。

今までずっと私はこの苦しみを経験したのだから、あなたを救うべきは自分じゃないと思ってた。
きっと順番があるんだ。
しばらくしたら、あなただって解放される。
そう信じてた。
そして、私はそのイジメの輪の外にいることで、自分は心ある人間だと安心することが出来た。
君子危うきに近寄らず。
雉も鳴かずば撃たれまい。

でもある日、あの鬼畜軍団が私に近付いてきて、
「一緒にあのコを囲むから、ついてきて」
と、笑いながら言う。
「ごめん、私はいいよ。あんまりうまく喋れないし」
なんとかその場を逃げようとしたが、
「そんなこと聞いてないよ。ついてこないなら、あのコの代わりにまたあんたを囲むけど」
鬼畜の言葉に足が震える。

「別にいいんだけどさ、あのコも、あんたのことイジメるのは嫌だとか言うから、今みたいになったんだよ。分かってる?」
「えっ…?」
「あんたをイジメるのはやめなよって。そんなことする奴らとはツルむ気もないって。私達、イジメてなんかないのにねー」
「…あのコが、私を?」
「どうするの?やるの?やらないの?あいつ、リアクション薄いから、正直あんまり面白くないんだけど。あんたの方が…」

私の心が動いた。私の体も。
あなたのもとへ、向かう。
奴らとともにではなく、私一人で。
あなたに教えてもらった、勇気をもって。

1/16/2025, 1:05:36 AM