のねむ

Open App

私は死の顔を知っている。
常に死と向かい合わせだからだ、と言えば貴方は笑うだろうか。
私は何も無い空間でただ、目の前にいる死の顔をずぅっと見ているのだ。


死の顔を見たことはあるだろうか。
私はある。いや、厳密には無いのだが、何となくこういうものだ、という確かな考えがあるのだ。
死の顔、というのは人によっては違うものだと思う。そして、その顔というのは、自分の居なくなった大切な人だったり、ペットだったり、そして嫌な事柄だったりと様々なのだが、その全てに一貫して言えるのが、見える顔は全て『美しい』という事だ。
簡単には、手に入れられない美しさがそこにはあるのだ。
ただただこちらを見つめる眼に、そっと手を伸ばしてしまうような、気付いたら崖の1歩手前なんてことは日常茶飯事なのだ。
美しい、楽しそう、とかそういう感情っていうのは、人を引き寄せるのはとても簡単で。
私はその死の顔を常に、見つめていた。


私の見た死の顔は、貴方だった。
とても美しくそして、最期の時と何ら変わらない眼をした貴方だった。

私は、何度も貴方に手を伸ばそうとしたけれど、毎回思い直し貴方と向かい合わせに立つ。
私が貴方と行ってしまえば、もう二度とこの美しさは見られないのだから。だから、私は今日も時々変わるけれど、美しい死の顔を見つめながら息をする。



───────

死というのは、簡単に見えて簡単では無い。禁断の果実のような存在。手を伸ばしても、掴めない。そして、美しいな、と私は思います。

死は救いであり、後悔でもあるんじゃないですかね。分からないですけど。私は死ぬのは怖くないです。死ぬ時は結局決まってる事だろうし、貴方の美しい顔が笑みを浮かべるから。だからこそ、その光景をずっと見ていたいのです。

8/26/2023, 7:42:03 AM