中宮雷火

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【とける】

夜の海。
きっとここにいては、心配されるだろう。
何をする気だ?と言われそうだ。
個人的に夜の海は自殺の名所になっていそうなイメージだ。
ただ、自分は別に死にたいわけではなく、単純に夜が好きだからここにいる。
逆に言えば、昼は嫌いだ。
あの照りつける太陽をみると、死にたくなる。
だが、不思議なことに夜はそんな希死念慮など消え失せてしまうのだ。
だから、夜は自分が自分でいられる時間。
そう思っている。

僕はいつものように夜の海に出向いた。
ここで何をするわけでもなく、ただ眺めるのだ。
だが、今日は違った。
気がつけば、足は海の方に向かっていた。
ピチャっと、足が波を踏む音が鮮明に聞こえた。
手のひらで海水を掬った。
月光に照らされた海水は宝石のように綺麗だった。
綺麗だなあ、本当に綺麗だなあ。
僕はどんどんのめり込んだ。
僕は海の中で揺蕩いながら、「このまま海に溶けたい」と思った。
ああ、どうでもいいや。
このまま、夜の海に閉じ籠もってしまえ。
僕は溶けた。
深海に、ゆっくりとおちていく……


目が覚めた。
10時半の日光。
朝だ。
魔法が解けたことを残念に思いながら、僕は渋々カーテンを開けた。
照りつける太陽を見ると、やっぱり死にたくなる。

8/15/2024, 3:11:58 PM