霜月 朔(創作)

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カラフル


キラキラと輝く5月の光が、
新緑萌える木々の葉を輝かす。
花壇には、春を待ち侘びた、
色取り取りの花が咲き乱れる。
そしてまだ冷たさの残る5月の風が、
枝を、葉を、花を、
そよそよと、揺り動かす。

そんな、思わず浮かれてしまいそうになる、
爽やかで、少しだけ愉しげな風景も。
俺なんかには、眩し過ぎて。
暗い部屋の中の窓辺に立ち、
窓から、爽やかな景色を眺め、
深い深い溜息を吐く。

空の蒼。木々の葉や草の緑や翠
花々の朱、紅、黄、橙、白、桃色…。
余りに、カラフルで。
灰色にくすんでいた俺の心は、
ますます掻き曇り、
灰色から黒へと沈んで行くばかり。

そんな、カラフルな風景の中を、
何の屈託も衒いもなく、歩く君は、
俺には余りに眩しくて。
憧れを抱く事さえ、烏滸がましいって。
半ば身を隠す様に、そっと窓から、
カラフルな世界を歩く君を見つめる。

灰色の世界から、
カラフルな世界に居る君を、
そっと見つめている俺に、
気付いてくれないかな。
…なんて。

5/1/2024, 4:14:04 PM