ナギ

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この世界は

夜道を歩いていた。
仕事が遅くまで続いてしまった。
残業ほど苦なものはないだろう。
(体がだるい。さっさと帰って寝よ)
なんて、考えていた。
横から近づいてくる車にも気づかずに。

目が覚めたら病院にいた。
轢かれたのは知っていたけど。
その後のことは何も覚えていない。
看護師が医師の方を呼んできてくれた。
私の怪我は、骨折と打ち身だけで済んだらしい。
けど、一応で入院するとのことだ。
(仕事、まだやることあった気がする、、)
特にすることがないため、仕事を熱心にしていた。
 なんの職業かって?内緒♪
何もしない日は久しぶりだ。

私を轢いた人はまだ捕まっていないらしい。
警察からの事情聴取も受けた。
人のことを轢いたのに謝罪もない。
稀にいるけど、そんな奴らのことが私は許せない。
私が何か悪いことをした?
まあ、周りが見れていなかったのは自分のせい。
そんな黒い世界を私は見てきた。
両親は私を捨てた。
施設に入っても面倒を見てくれた人たちの裏の声を聞いた。
その時からかな。
(この世界は笑顔で塗りつぶされただけなんだね)
と。
そんなことを考える日々だった。

もう耐えきれなくなった。
看護師の人にこのことを話してしまった。
看護師は言った。
「そうですね。この世は人がいる分、裏がある世界です。けど、あなたの考えを尊重してくれる方も必ずいます。私は、あなたの考えを尊重しますよ。」
涙が止まらなかった。
この人の言ったことに裏はなかった。
裏のない、笑顔。
私はずっとこの世界は黒く穢れているものだと思っていた。
けど、違った。
この世界は、私の知らないところで白く輝いていた。

1/15/2024, 10:53:27 AM