名勿し

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目が覚めると

知らない場所に居て欲しかった。

しかし見えたのは自分の部屋の天井で、
昨夜見た夢もなんなら夕飯も覚えてすら居ないが、
朝と実感するには十分な倦怠感が襲う。

重たい体をなんとか起こしてベットから降りると、
未だ体は夢の中なのか、ぼんやりと浮いた感覚がする。
ふわふわとした意識の中、洗面所で顔を洗って、
初めて自分の顔とご対面する。

「こんなにブスだったか??」

私は毎回そこで脳が覚醒する。
皮肉な話だが、私の脳みそは割と回転が速い。
故に目の前の見るも無惨なブスは自分であることを
コンマ1秒で認識してしまうのだ。

朝から冴えない顔とのご対面にため息がでる。
朝起きたら知らない場所で某漫画の様な美少女に
なっていたり、イケメンに囲まれてちやほやされる
世界線は一体どこなのだろうか。
そんな世界に行けるならトラックに跳ねられようが
電車に轢かれようが私は構わないのだが…。
まぁ、行った所で私は悪役令嬢だったりするのだろうが。

そんな事を考えながら海苔と明太子で白米を包んで口に運ぶ
なんだかんだでこれが一番美味いのである。
冷たい緑茶と、先日の味噌汁を温め直したものを飲み干して
息を吐く。

さて、今日も一日が始まるわけだが、
その前に一旦、鏡の世界に入れないか確かめるため、
姿鏡に指を付けてみる。

結果は今日も指紋がつくだけだった。

まったく…ではこの忌まわしい玄関のドアを開けたら
知らない草原が…

広がっていなかった。
アスファルトである。
泣きたい。

こうして私の愉快な脳みそは、
何とか1日を消化していくのであった。

7/10/2023, 11:25:33 AM