『友達』
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友達という身分に甘え倒していた。私はもうあの子の友達ではない。ただの、暴言厨の他人だ。
『うるさいなあ、そんなんだから……』
『もういい加減にして!』
そう言って、一緒に拡げたプリントを薙ぎ倒して彼女は教室を出ていった。筆箱の中身も辺りに散らばって、見るだけで虚しい。
最近様子がおかしいと思っていたけど、原因は自分にあったんだ。
「……っぐ、ごめ、ごめん……っ」
涙が溢れ出して止まらなかった。あの時も、あの時も、あの時も、私が悪かった。そう思うと、拭いても拭いても足りないほど溢れてくる。今頃あいつは……あのこは、何をしているんだろうか。
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騙して悪かった。そう思ったのもつかの間、私はあまりの幸福感と息苦しさで、階段に思わず腰かけた。大親友を教室に置き去りにして、階段を駆け下りてきた。
『ずっと友達でいてね』
『違ぇだろバカ、大親友だって』
大好きな大親友だ。だから、このくらいではへこたれないよね? きっとこれから、私よりも貧弱な体力で階段を駆け下りてくる。だから、そんな彼女の背中をさするために待ち続ける。そして、「行かないから安心してね」って、声をかけてやるの。そうすれば、もう私しか見えない。
閉校しても待ち続ける。どれだけ経っても、帰りはここを通らなきゃいけないから。
今頃あの子は私のことばかり考えているはず。ああ、そのまま私しか見えなくなればいいわ。私の大好きな友達。私に友達はたくさんいるけど、あなたの友達は私だけだもん。
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私の友達は。あのこだけなのに。酷いことを言った。ああ。孤独ならば、生きる意味などない。
三階の窓から、飛び立ってしまおう。二重ロックのかかったカギを丁寧に開けて、スチールで出来た窓枠に足をかけた。風が心地よい夕暮れ時だった。今までありがとう。大好きだったよ。
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大親友は、戻ってこなかった。その時彼女が、私のことをどう思っていたかだけが、気がかりだった。
10/25/2024, 12:05:01 PM