床に黒い猫が這いつくばっている。
「何してるの?」
「書き初め」
整った字を書く黒猫は、昨日年越しに何の興味もみせなかった同居人である。今日も全身真っ黒い服を着ている。まぁ墨で汚れることを配慮したのかもしれないが、黒以外の服を着ているのはあまり目にしない。思い直せば正直似合ってもないなと内心、苦笑する。
「なんて書いてるのー?」
「フトーフクツ」
ふとーふくつ、ふとうふくつ、…ってなんだったか。
「何があっても挫けないーって意味だった気がする」
「へぇ」
〝不撓不屈〟とさらさら書き上げたこの人間に、挫けるようなイメージはない。本人にしかわかることではないが、一体何を考えてんだろう。
1/2/2025, 2:36:00 PM