たやは

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小さな勇気

高校生になったらオシャレをして友達とカフェに行く。そんなことを夢みていた私は、中学の時と変わらない生活をしている。朝、学校に行き、部活にも入らなかったので、学校が終わればそのまま帰宅。
帰宅後は、母に送り迎えをしてもらい塾へ。塾から帰ってきたら夕飯を食べ、宿題をやって入浴。その後就寝。毎日同じサイクルだ。

高校生になってもなんの変化もない私だか、密かな楽しみができた。それは、前の席に座る神田さんが、席の椅子を引く時に見えるネイル。
神田さんの白い指に映えるピンクやブルー、そしてキラキラしたラメの入ったネイルの可愛さがたまらない。

もっとゆっくりネイルを見てみたい。でも、そのためには、神田さんに話しかけて許可をとらないとダメだよね。
神田さんに話しかけるのことはできるのか。いや。無理。私にはそんな小さな勇気もない。

だって、神田さんは私とは正反対でお化粧はもちろん、髪もくるくるしてて可愛いし、制服も可愛いく着こなしている。
そんな神田さんはクラスの人気者で、彼女の回りはいつも華やかだ。何もかもが私とは違いすぎる。

はぁ〜。ネイル可愛いいなぁ。
今日も神田さんの椅子を引く手を見ながらうっとりしている。ここ最近の楽しみだから仕方がない。

「え?そうでしょ。可愛いいでしょ。」

え!声が出ていたの!どうしよう!
思わず顔を上げると神田さんが満面の笑みで私を見下ろしていた。

「う、うん。すごく可愛いい。」

「ありがとう。昨日、サロンに行ってきたところなの。」

「サロン…。」

私には全く縁のないところだ。

「小林さんもネイルやってみない。小林さんの指細くて華奢だからネイルが映えると思うよ。」

「私が…ネイル。」

「大丈夫。私も行くし。そうだ。ルルちゃんも一緒に行こうよ。サロン。」

神田さんは教室の後ろで他の友達と喋っていた神田さんの友達に声をかけ、私の指を彼女に見せた。

「どうよ。ルルちゃん。小林さんどんなネイルがいいかな。」

「そうねぇ。始めてだしグラデーションとかにしてみたらどうかな。」

何か、私の指を掴み2人が会話しているが、話しに全くついていけない。

「じゃあ。帰りに寄って行こう。小林さん用事とかない。」

これは、神様がくれたチャンスだ。私を変えたと思っていた私に降って湧いたチャンスだ。そう私は変わりたいのだから。

「うん。行く。」

怖がらずにもっと早く神田さんに声を掛けていれば良かったと思うことがある。でも、今でも神田さんは、ネイルがはげるとちょっと怒りながら、一緒にサロンに行ってくれる。大切な友達だ。

「小林さん。オシャレ怠けない。」

彼女のおかげで夢みていた高校生活が送れている。今度は下の名前で呼んで欲しいって言ってみようかな。

1/27/2025, 11:09:01 AM