名無しの夜

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目が覚める。

めっぽう朝に弱い私が目覚める時間じゃない。

だから。
『朝だよ』と起こしに来ていた気配を探す。

でもそこには、誰もいなくて。

いなくても。
朝が好きだったあの子のために、カーテンを開けて。

窓も少し開いて、ひんやりした風を通す。

代わり映えしない風景に、あの子は何を見ていたのだろう。


何も変わらなくても。

日々の風の匂いは違うか。
鳥の声も、きっと。


眠気まなこでカーテンと窓を開けて
「はい、どうぞ」とベッドに戻ろうとすると

なぜだか不満顔をするものだから。


一緒に並んで外を見て、風を浴びたね。


時折、顔を上げて見上げてくるから。

「楽しいね」

と言えば、これまた『何が?』みたいな顔をして。

楽しいは正解じゃないのかーとボヤけた頭でボヤいたものだ。


一緒に同じことをすることが、大切だったのかな。


うっすらと差し込む朝日に目を閉じて。


あなたが、隣にいる


そんな幻のような夢を、今日も心に描いている。

4/16/2024, 9:17:21 PM