【やりたいこと】
中学の時、授業内で自分のやりたいことリストを作る時間があった。
将来の夢や、やりたいことがない私にとっては苦痛でしかなかった。
止まる私のペンに見飽きて隣を少し見た。
隣にはクラスの人気者のK君が迷いもなくペンを走らせていた。
よっぽど見ていたのだろう、K君が不思議そうにこっちを見てた。
「どうした?」
「え…あ、その……」
人気者と話す時が一番緊張して話せない。
「…俺のやりたいことリスト見るか?」
「あ…そうじゃなくて……」
「ん?」
「私やりたいことが無いから、沢山書けるK君凄いなぁって思って…」
「………」
この時変な空気を作ってしまったという焦りと後悔でいっぱいだった。
あの時、K君にとっては可笑しな事だったのかもしれない。
やりたいことが無いだなんて。
「ご、ごんめね…可笑しくて…」
「いや…逆にチャンスじゃね?」
「え……?」
「やりたいことが無いなら作れば良いだけだろ」
これが中学生の思う正論なのだろうか。
私は、この言葉が胸に…いや全身に響いた。
「みんなでお前のやりたいことリスト作れば良いだろ?」
そう言いながらK君はニカッと笑った。
太陽の様に暖かく、思わず近づいてしまいそうなくらいの笑顔だった。
「あ、今見つけたよ」
「ほんとか?そりゃあ良かった!」
私はすぐさまプリントに文字を書いた。
【やりたいことリスト】
1 友達を沢山作ること
高校になってもK君は相変わらずクラスの人気者だった。
それでもK君はあの日からずっと私に話しかけてくれる。
「今日赤点の補修があるんだー」
「明日の放課後はな!」
「なー、勉強教えてくれよ〜」
K君が話しかけてくれるたびに私のやりたいことリストが溜まっていく。
今日もやりたいことリストが一つ増えました。
【やりたいことリスト】
1 友達を沢山作る
2 勉強を頑張る
3 メイクを覚える
4 おしゃれする
5 K君とたくさん話すこと
6/11/2023, 12:34:17 AM