ののの糸糸 * Ito Nonono

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No.22『プレゼント』
散文 / 掌編小説

 わたしが大好きな曲に、恋人にたくさんのプレゼントをもらう歌詞の曲がある。オチから言ってしまうと、本当にたくさんプレゼントをもらうんだけど、恋人だと思っていた人には彼女がいたという、全く救いがない曲なんだけど。
「あなたがわたしにくれたもの……」
 そっと口ずさんで苦笑った。わたしは、恋人からプレゼントをもらったことがない。

 もしかして彼には浮気相手がいて、その子にはプレゼントを贈っているのだろうか。それともわたしが浮気相手だから、プレゼントを贈るのがもったいないのかも知れない。その証拠に彼は仕事が忙しいからと、会えない日が続いている。
 別にプレゼントが欲しいわけじゃないし、ただ会いたいだけなんだけど。そんなことを考えながら、クリスマスイルミネーションで溢れる街中をひとりで歩いていたその時、彼から二週間ぶりにメッセージが届いた。

『今どこ?』
 仕事が終わった帰り道。真っ直ぐ帰るのが寂しくて寄り道をした。
『分かった。すぐ行く』
 彼からのメッセージはいつもそっけない。でも、どうやらひとりぼっちのクリスマスは過ごさなくていいようだ。

 それから30分後。名前を呼ばれて振り返ると、薔薇の花束を抱えた彼の姿があった。更にそれから数分後。彼から給料の三ヶ月分の指輪と、プロポーズの言葉を贈られることになる。

お題:プレゼント

12/24/2022, 8:14:20 AM