初心者太郎

Open App

—人気者の理由—

僕の担任の先生は、人気者だ。

「片桐さん、いいよ! だんだん足の動きが良くなってる!」先生が言った。

体育の時間。
今日は、ハードルの練習をしていた。

僕は、片桐をみた。運動神経の悪い彼女は、体育が嫌いだと以前言っていた。だから、練習はあまりやりたがらなかったはずだ。

彼女は、ニコニコしながら「はい!」と大きく返事をした。

「安藤くん、もっと歩幅を大きくしてみよう! 安藤くんは覚えるのが早いから、もっと練習すれば、もっと良くなるよ!」

僕は、安藤をみた。ぽっちゃりとした彼は、片桐よりも運動嫌いで、昨年は『見学』という名のサボりばかりだった。

そういえば、今年はそれをみていない。
彼は、頷いてまた列に並んだ。

「大津くん、ハードルを跳ぶ時に減速してるよ! 大津くんは足が速いから、もったいない! もうちょっと手前で跳んでみよう!」

僕は、大津をみた。彼はとにかく足が速い。運動会では、リレーのアンカーを走った。

先生の言葉で、彼はさらにやる気になっていた。

「じゃあみんな、一旦練習を止めよう!」

みんな、動きを止めて先生に注目する。

「みんな、動きは良くなってるんだけど、その中でもよかった人を紹介したいと思う。佐藤、お手本をみせてくれないか?」

先生は、僕をみた。みんなが僕をみた。
僕は「はい!」と返事をした。

先生が人気者な理由がわかった気がする。

誰もがみんな、自分を見てくれていると嬉しい。そして誰もがみんな、褒められると嬉しいのだ。

僕は、スタートラインに立ち、全力で走り出した。

お題:誰もがみんな

2/11/2026, 2:57:55 AM