「サールサくん! ウィール!」
食堂でサルサとウィルが並んで食事をしていると後ろからそんな言葉とともにアリアにトンと肩を叩かれた。
叩かれたことに動揺したのか、ウィルは持っていたスプーンを落とし、サルサはビクッと身体を震わせた。
「わ……。ビックリしました……」
「名前呼んだんだからビックリしないで欲しいなぁ。名前も呼ばずに肩叩いたわけじゃないじゃん?」
「呼ばれることを想定しなければ驚くものです。……で、何の用ですか。わざわざこんな公衆の目前で貴女が素を出してること自体、わりとおかしなものだと思いますけど」
「ん〜、というかね、今日は誰も居ないよ?」
「は?」
ウィルが怪訝そうに辺りを見渡せば確かにアリアの言う通りに誰もいなかった。
「…………いないじゃないですか」
「いや言ったじゃん? 今日は誰もいないよ〜って」
「なんでですか」
「え、んーとね休みだから」
アリアは当たり前でしょ? とでも言いたげな顔で二人の方を見て、その言葉にウィルはため息をついた。
「ちなみに補足をしておくと、ウィルはサルサくんの教育係なのに、オフの日パカパカ作ったから教えて貰えなかったみたいだよ。私は単純に仕事の関係で城にいるだけだよ」
「…………聞きたいことを全部説明されました。……で、そんな状況下で何の話をしたいんですか?」
「ふふん。そりゃもちろん、デウス様にどんな話をされたの? って話!」
「貴女がそんなに興味を見いだすような話はしてないですが」
ウィルは目をふせながらそう呟いた。サルサはアリアから目を逸らす。
「…………はぁ、でしょうね。そもそも黙秘主義? 的なアレがあるんでしょー。つまんないの」
アリアは頬をふくらませながらそう言った。
「……ふ、よい。アリアが聞きたくなるのもおかしくない事だ」
「……え? ………………わぁ!!!」
アリアが後ろを振り返れば、ニコニコしながらデウスが立っていた。
「デウス様、なぜここに………………」
「隣の図書室に用があったものでな。すぐに離れるから楽しい『らんちたいむ』を過ごすんだぞ」
そう言ってデウスは食堂から出ていった。数分の沈黙の後、大きく息を吐き出したアリアは呟いた。
「死ぬかと思った」
「私もです」
ウィルが目を伏せながら再び落としたスプーンを拾い上げるのだった。
1/27/2025, 3:44:30 AM