トポテ

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時計の針の音と、彼の心地よい寝息だけが部屋の空気を揺らしている。
それらをBGMに読書をすること。なんとなく眠れない夜のちょっとした楽しみだ。
次に読む時間のため読み進めたページの間にしおりを挟み、ぱたんと本を閉じた。
ベット横の机になるべく音を立てないように優しく本を置き、スタンドライトの明かりを消した。
暗くなった部屋で静かな月明かりが彼の銀色の髪をきらきらと輝かせる。
目を瞑り前髪の上からおでこにキスをした。枕に頭を預け目を瞑る。
「口にはしてくれないのか?」
まだ眠そうな彼の声が聞こえて目を開くと、枕から起き上がった朧気な瞳で僕を見つめる彼と目が合った。
彼はぽすっと枕に頭を落とす。そしてもう1度目を閉じ口角を上げて、ん。と唇へのキスを促す。
僕は、はぁ。と花を少し揺らす程度の小さいため息をつく。体を起こし、軽くキスをした。
「おやすみ」
耳元でそう囁いた後ゆっくりと体を元の位置に戻す。
「おやすみ」
『おやすみ』の次に彼は僕の名前を呼んだ。そのしばらく後、また寝息をたて始めた。
月が真南に昇った頃、かち。かち。という規則的な時計の針の回る音と、2人の寝息だけが部屋の空気を揺らしていた。

──時計の針

2/6/2024, 11:38:02 AM