「見て、おれたちの学費が光ってる」
あらゆる風情をぶち壊しにする台詞を吐きながらおまえが笑う。
「あれで誰が得すんだろうな、毎度思うけど」
大学構内に続く並木道のイチョウにぐるぐる巻かれた白い電球の群れを眺めて、俺は溜息をついた。
「デートスポットっていうんじゃないしねえ。クリスマスツリーでもなくてイチョウの木だし」
首を傾げながら苦笑いしていたおまえは、でも、と言葉を続ける。
「こうやって話の種にはなるんだから、まんざら無駄ってわけでも」
「無駄だろ」
「ひどい! せっかくひとつでもいいとこ見つけてやろうとしたのに!!」
「昼行燈、銀杏並木にイルミネーション」
おまえが、もー! と声を上げながらおれを叩く真似をして、俺はけたけた笑いながらそれを避ける。
たぶんとても陳腐でありふれていて風情もクソもないやりとりだけど、俺はこれが嫌いではない。
光れよ学費、と思う。
馬鹿騒ぎとくだらないおしゃべりを引っ張り寄せるために、白々しく、イチョウの木の周りで。
12/15/2022, 2:12:43 AM