◎君と僕
#65
君と僕は同じ。
体も心も思考も全てが同じ。
平行世界から迷い込んだ僕は
君と同一人物だ。
そんな僕らのたった一つの違い。
それは、君がとても幸せだということ。
僕が"元の世界"で息を止めたということ。
魂だけになるとこうやって
生きている自分がいる並行世界にとぶことがあるんだとか、自称死神が言っていた。
その死神曰く、とばされた魂と
その漂着地点になった同一人物は同時に
狩る決まりらしい。
僕が死んだばかりに狩られる君。
巻き込んで、ごめんね。
幸せの只中で死に攫われる人たちも
僕みたいな魂がとんできてしまっていた
のかな。
そんなことを考えている間に、
死神が大きな鎌を振りかぶる。
切っ先が迫る中、君がこちらを見て
微笑んだ気がした。
───────
「僕ら、また、この世に生まれようね」
『そしたら僕も幸せになれる?』
「きっと」
『……君も、幸せでいてね』
「……うん、一緒に幸せに生きてやろう」
4/11/2025, 11:36:12 AM