虹の始まりを探して
虹を見つけた。綺麗な虹。
虹を見つけると、毎回決まって見るところがある。虹がどこから始まっているのかだ。
本当は虹は、雨粒と光の屈折とかで見えるから、実態があって触れられるわけじゃない。それでも、私はどこから始まっているんだろう。と毎回思ってしまう。
今日も虹を見てそんなことを思っていた。
虹の始まりには何があるんだろう。
いつもは目で見るだけなのに、そんなことが気になってしまった私は、カンカン照りの夏の中、虹の始まりに向かって歩き始めた。
別に何か特別なものがあるはずない。
そんなことは分かっているはずなのに、今日の私は何かがあってほしいと願うように向かっていた。
歩いていくうちに、虹は少しずつ薄くなってしまっている。少し焦りながら、早足で向かい始める。
「なにかがあってほしい」 そう思いながら。
虹が消えるとほぼ同時に虹の端に見えたところに着いた。
そこには、やっぱり何も無かった。
「やっぱりね。」
そう思ったのに。
何故か私は、虹の端に向かって歩いたことを、後悔していなかった。
どこかの小さな夢を持った心が、虹を追いかけることを楽しんでいた。
7/29/2025, 9:32:23 AM