MOCHI

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そっと小包を開く。その中には文字がびっしり書いてある、たくさんの紙が入っていた。
今私が開けているこの箱は生前の母が毎日書いたという、日記が詰まっている。でも何故、ノートではなく紙にしたのか私にはいまいち分からない。
私は何をこんなに毎日びっしり書いていたのか気になって1枚手に取ってみた。
日付は3月17日。私がちょうど高校を卒業した時だ。
内容は、
今日は、娘の愛華が高校を卒業した。そして、もう数日経ったらこの家から出ていく。今までの激動の日々は、長いようで短くて、あっさりしすぎて私がもう少しやっていたいくらいだ。今までの思い出を振り返ってみると、愛華が初めて好きな人が出来たと、私に相談してきて実際に告白してみたけど、でも振られて。失恋して泣いて。そんな女の子らしい人生の体験をした日や、もっと遡ると赤ちゃんの時に初めて私に笑いかけた時など、思い出せばいっぱいある。でも愛華に本音を吐かれた時はびっくりもしたし、怒ったし、でも悲しくて。私が悪かったと分かっている。思春期なのに、ズカズカ心の中に乱暴に入って。こんな風に娘の為を思って失敗する事もたくさんあった。それでも、愛華をここまで育てくれさせた事に感謝している。

最後に愛華へ。この手紙を見るかどうかは分からないけど、ここまで元気に育ってくれてありがとうね。あまり気の利かない母親だったかもしれないけど、それでも私をお母さんと最後まで呼んでくれてありがとう。
人生はまだこれから。だからもっと頑張って!私も暖かく見守ってるから、何があっても自信もって生きて!

と、書かれていた。実際に母はこの手紙を書いた1週間後、3月24日に死んだ。母は癌だった。それも末期の。母はそれまでずっーと隠してきて、耐えてきて、しかし、私の卒業式が終わった次の日に病状は悪化した。
今、この手紙を見ているのはそれから2年経って、ちょうど成人式を終えた後に父が渡してくれて、丁度見つけたので見ていたが、涙が止まらなかった。
私は今まで母の事をウザイ人と認識していた。でも実際は全部私のためにやっていてくれたこと。当たり前のように気付けるはずの事が私には気づけなかった。
私は最後にあなたに届けたい。
「我儘な娘でごめんね。でも私にとっては自慢の母親だったよ。確かにウザイけど、ウザければウザイほどそれは私を愛してくれてたんだって。今気づいたよ。私も自信もって生きるから、見守ってて」
と、ただこれだけでもあなたに今すぐ届けたい。

1/30/2024, 12:47:33 PM