梅雨も もう明けますね
しとしとと降る雨の中 あなたと話すのが好きでした
透明なガラスで隔たれた 空の涙を見送って あなたと笑うのが好きでした
ざぁざぁと降る雨の中 あなたと歩くのが好きでした
傘もささず 二人してずぶ濡れになって 一緒にタオルで拭きあった時間が好きでした
窓の中にぶら下がったてるてる坊主は どこか寂しげにゆらゆらと揺れていて それがなんだか可哀想だと あなたはもう一個作ってくれましたね
おかげで 今私の家は二人の神様によって守られています
ずきずきと痛む頭を撫でながら あなたは不思議なお話をしてくれましたね
「人は死んでしまったら、自分が死んだことを自覚できないんだって」
「だから気がついて欲しくて、大切な人に会いに行って、でもわかって貰えなくて」
「それが悲しくて辛くて、だから幽霊は怖いものになっちゃうんだって」
「どうしてそんなことを言うの」なんて聞いたら あなたはきっと困った顔をして 黙って教えてくれないだろうから 私は手の温かさに身を任せて眠りました あなたはその事に 気付いていたでしょうか
あなたが涙を流すと悲しい あなたが笑うと嬉しい あなたが苦しんでいると胸が痛い あなたが喜んでいると胸が暖かい
ねぇだから
そんなにも泣かないでくれませんか そんなにも悲しまないでくれませんか 苦しまないでくれませんか
私はあなたがいたから あなたと生きていれたから
笑いかけてくれた日々が 傘を手放したあの日が かたつむりを追いかけたあの日が 痛みを抱きしめてくれたあの日が
あなたがいてくれたことで 私はずっと幸せだったから
『サヨナラの合図』———【あなたがいたから】
6/20/2024, 11:43:51 AM