お題:旅路の果てに
「『終わり』と『果て』の違いってなんだと思う?」
地面に仰向けで倒れる私に向かって男は尋ねた。まぶたがひどく重い。抗えない眠気に蝕まれている私は声を発することさえできない。
「『終わり』には『始まり』が存在する。『果て』の対義語はぱっと思いつかねえ。あと『終わり』ってのは明確だけど、『果て』は曖昧なイメージ。あくまで俺の考えだけどな」
どうやら私がなにを答えようが答えまいがどうでもよかったらしい。男は持論を展開した。
早く立ち去らないのかとぼんやり思う。この男がいなければ絶対静かになるはずなのに。どうせなら静寂の中でまぶたを閉じて感傷に浸ってしまいたい。
男が私の顔を覗き込んできた。
「お前、俺を探してずっといろんなとこ旅してたんだろ。残念だったな。こんな結果になってよ」
その結果を私に与えたのはお前のくせに。そう言ってやりたいのに、代わりに口から出てきたのは血だった。手足が冷え切って感覚はほとんどない。あと少しで私の人生は終着点に至る。
この男はかつて私から家族を奪った。
残り少ない私のすべてを復讐に捧げたのに、この男を殺すどころか苦しませることもできなかった。こいつにとって私は、せいぜい物語の脇役にすぎないんだろう。映画に出てきそうな広大な空を見上げながらそう思った。
「復讐を志した旅なのに理想の形で終われなかった。お前が主人公なら『復讐の旅路の果て』ってタイトルになりそうだ」
空を見ていたはずなのに、きづけば視界は真っ暗になっている。
私の人生の幕が閉じた瞬間だった。
1/31/2026, 2:21:52 PM