仕事終わりに会社を出て、彼女の元へ向かう。お団子にしていた髪を解いて、ネックレスと、リングを外して。今日は焼肉でも食べようと話したから、ベルトも緩めておく。
後輩に譲った割引券、貰っとくんだったな。
音と光に溢れている夜の街はやはり苦手だ。酒に酔った大人が、自分に酔った子供が、人に酔った私が、気持ち悪い。
あぁ、不思議だ。混ざりすぎて色を失った世界で、あんたのヒールの音だけは鮮やかに届く。
「あれ、髪下ろしたんだ?」
うん、だって、そっちの方が好きでしょ?
いっぱい食べたし、話した。御手洗に立ったタイミングで、服に着いた煙の匂いに気が付く。お互い旦那に内緒で来ているため、これは不味いなと笑う。名残惜しくも焼肉屋を出て、コンビニで消臭剤を買って、休憩場を探す。「私たちお姫様だから」悪戯に笑って指した先は、ピンク色のお城。「ねぇ、ダメ?」そんな目で見ないでくれ。
お城の中の大きなベッドで2人、横たわる。スーツはハンガーにかけて、消臭剤をかけて。
お風呂上がりの肌が吸い付いて心地よかった。軽く湿った長い髪が私の頬を、貴方の肩を撫でる。珍しく巻いてる髪は、誰のためだろうか。
額、頬、首、そして指。順番にキスをする。
似合わない紅には、私の願いが詰まってる。
あんたの薬指、世界で唯一憎らしいその輝きを、私が奪ってしまえるように。
不思議よね。お互い旦那が居るはずなのに、指輪をするのは
ただ、あんただけ。
5/13/2025, 4:37:44 PM