未知亜

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ㅤ思えば必ずしも、あなたである必要はなかったのだ。
ㅤあの日声をかけてくれたのがあなただったから。最早あなたなしでは立てぬ私になってしまった。叶わぬ夢になってしまった。

ㅤ勝手がわからず困ったあなたは「尋ね易そうだから」という理由で私を選んだといった。
ㅤそんな風情を出していたらしい自分を、私は初めて誇らしく思った。私は困り果てたあなたの役に立つため、あなたに選ばれたのだから。それで恋を自覚したのだから。
ㅤけれど困っていたのはその時だけで。恐らく選んだ時と同じくらい気軽に、あなたは去ってしまった。その後の私が斃れて動けないなんて、思いもしないで。
ㅤあなたでなくても良かった。そんな未来が確かにあったはずなのに。叶わぬと知ってしまった夢に、今の私はただ沈むだけ。


『叶わぬ夢』

3/17/2025, 3:30:07 PM