皆さん、遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
私事になるが去年の大晦日、俺は実家に帰省した。
数年ぶりに生まれ育った我が家へと帰ってきた俺はその夜、父と母、結婚して二児の父親になっている兄、義姉さん、甥っ子たち、弟、そして若干ボケかけている婆ちゃんと一緒にカニがたくさん入っている温かい鍋を囲みながら楽しい大晦日の団らんを過ごした。
テレビでやっていた年末恒例の歌番組をボーっと見ながら鍋に入ってるカニを取り出して無心で貪り食ってたら兄ちゃんに叱られた。以下のような内容だ。
「おい、カニばっか食うなよ。お前は終わってる人間なんだから」
……?
俺はカニの身をほじくっていた手を止めて兄ちゃんを真っすぐ見据え首を傾げた。
「終わってる人間? 俺が?」
思わず復唱する。当然だ。
カニばっか食うなよと怒られるのはまだ理解できる。自分でもちょっと遠慮したほうがいいかなと思っていたからだ。
だが、俺が終わっているとは聞き捨てならなかった。それにその真意もいまいち理解できていなかった。
「終わってるだろ。お前はこの先もう夢も希望もないんだから。老い先短い婆ちゃんや若いやつらにカニをわけてやれよ」
ビールを飲んで酔っ払っているのか、ガハハと笑いながら、やたらと辛辣なことをいう兄ちゃん。婆ちゃんはボケてて会話の内容を理解できていないようだが、楽しそうな雰囲気につられてニコニコと笑っていた。ついでに父さんと母さんと弟と甥っ子たちも爆笑していた。義姉さんだけは、やめなさいよって感じでさり気なく兄ちゃんをひっぱたいてくれていたが。この場で俺の味方になってくれたのは血の繋がっていない義姉さんだけだった。
まぁ、ともかく、腹がたった。なんだか分からないが馬鹿にされて笑いものにされている気がしたからだ。
しかし、言い返すだけの言語化能力もなければ笑いにかえるウィットに富んだジョークを咄嗟にだせるIQもない俺はただヘラヘラして、カニに手を伸ばすことなく鍋に残っている白菜とえのきをモソモソ食うことしかできなかった。
で、本日のテーマ『夢を見てたい』
2026年になった。
正月休みも終わり、俺はいつもの狭いアパートに帰ってきていつも通り仕事をしている。
1月5日くらいまでは世界が正月気分で煌めいていたが、もう今くらいになると普段となんら変わらない。
なんにもめでたくないし、なんにも面白いこともない毎日が続いている。
そんな中、寝る前にふと思う。
(俺って終わってる人間だったのか……?)
大晦日、兄ちゃんになんとはなしに言われた言葉が妙に引っかかっていた。というより根にもっていた。
(誰が終わってる人間だよ。終わってるのは結婚して人生の墓場に入ってるアンタのほうだろ)
などと男やもめの卑屈な感情を丸出しにして実の兄に悪態をつくほどにはモヤモヤしていた。
……が、兄ちゃんの言っていたことも時間が経って考えてみると理解できる。確かに俺は終わっている人間だ。
いまさらスポーツや学問で成功するのは年齢的に難しいだろう。じゃあ企業するか?となってもそんな度胸も資本金も人脈も、というかなんも俺にはない。つまり、人生のゴールがおおよそ見当ついているのだ。たぶんこのまま適当に働いて生涯独身で酒の飲みすぎかなんかで苦しみながら死ぬのだろう。お前には夢も希望もない、それを兄ちゃんは終わっている人間と要約したのだ。
(ああ、確かにな。俺は終わってる。未来に可能性がある甥っ子や弟や、先が長くない婆ちゃんにカニを譲るべきだったなぁ)
俺はお正月がだいぶ過ぎてから、ようやくその真実に到達した。しかしそれは寝る前だったので、その時は凄く反省したけど翌朝になったら半分くらい省みる気持ちを忘れてしまっていた。これは良くない。
そして現在、我思う。
今からでも見られる夢はないだろうか?
急募、俺の夢。
ちなみに年末ジャンボ宝くじは数万つぎこんで夢と散ったので却下だ。
1/14/2026, 6:47:48 AM