美夜

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 『優しさ』


 雪が綺麗だった。
 傘に隠れてキスをした夜、彼の家で具だくさんの豚汁を作って、二人で食べた。
 あったかかった。
 あったかいだけで幸せ気分になる。
 「やっぱり日本人は味噌汁だよな。」
 なんて納得顔で笑って、おかわりをせがむ彼。
 味噌汁って幸せになる。なんだかそう実感して、たっぷりとおかわりを注いだ。
 「お前の味噌汁が一番!」
 嬉しそうにおかわりに箸をつける。
 ふと気になる。
 「なんかさ、君って呼んだり、お前って言ったりするよね。」
 彼が私の瞳をみつめる。
 「あぁ、うん、嫌?」
 「全然いいけど。」
 彼が目を伏せてゆっくり豚汁を飲みながら答える。
 「お前の方が近い気がするし、君って大事に呼びたい時もあるし、両方あるんだ。」
 「そうなんだ。」
 「どっちが好き?」
 「んー、両方。」
 「気が合うな。」
 お前って呼ばれるのも、私は嫌いじゃない。寧ろドキドキする。彼のものになったみたいで嬉しい。
 君って呼ばれるときは、きちんと女性扱いして貰えてる気がして、それも嬉しい。
 彼はいつも紳士的だけど、時々男らしいから、ぐっとくる。
 子供みたいな彼も好きだし、私を大事にしてくれるとこも嬉しくて。
 心を鷲掴みにされている。
 でも、それが痛くない。
 とても優しい。
 彼の私に対する優しさは、まるごと包み込んでくれる安心感があって。
 味噌汁のようにホッとする。
 かけがえのない、私の恋人。
 雪の中でも温かかった。

1/27/2023, 1:35:48 PM