光届かぬ海の底。彼女はその場所で、ただ、静かに唄をうたう。その姿はヴィーナスより美しく、その歌声はセイレーンより艶やかで、その様子は海を慈しむ母なる神のようであった。しかし、対照的に彼女の周りは木の破片や海藻が絡み合った沈没船などが散らばりまるで終末のようだった。それでも彼女は唄うのやめない。ただ、そこでじっと待っている。今か今かと待ちわびて、今日も唄声を響かせるのだ。
1/20/2023, 11:40:13 AM