いろ

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【夏】

 じいじいと五月蝿いアブラゼミの鳴き声が、照りつける日差しの暑さをさらに際立たせる。なんだって日本の夏はこんなにも蒸し暑いのか。公園の木陰にいるというのに、全身が溶け落ちてしまいそうだ。
 真っ青な空と木々の緑のコントラストが目に痛くて、ベンチの背もたれに背中を預けて瞳を閉じた。そうしているとやがて、朗らかな君の声が耳朶を打つ。
「お待たせ!」
 ゆっくりと目蓋を持ち上げれば、目の前にソフトクリームが突き出されていた。思わず目を瞬かせれば、眩しいくらいに明るい君の笑顔が僕へと向けられる。
「アイス、半分こにしよう!」
「良いの? 食べたくて買いに行ったんでしょ?」
 行列をしているアイスワゴンに、わざわざ炎天下にその身を晒してまで並んだのに。と、君は少しだけ照れたように僕から視線をそらした。
「良いの。一緒に食べたくて、買いに行ったんだから」
 その頬が赤いのは、夏の日差しのせいか。暑いだけのこの季節は好きじゃないけれど、だけどこんな可愛い君の姿を見られるなら悪いことばかりでもないかもしれない。
「ありがとう、いただきます」
 君の手の中のソフトクリームへとかぶりつけば、濃厚なミルクの甘さが口の中を冷たく満たした。
 

6/28/2023, 12:51:11 PM