「愛情を知らない子供」
僕の日々は楽しいものじゃなかった。
人を殺さなきゃ生きて行けなくて人を殺すことを強要される。だから僕は毎日、殺し暴力で生きてきた。
もちろん、僕がそうなら他の人もそうなわけで大人に殴られることもしょっちゅうあった。僕は身体中痣だらけだった。
嫌な人は殺せと教わったし、身近にいる大人は殺す方法以外は何も教えてくれなかった。
ある日、見た事のない綺麗な服を着た大人が声をかけてきた。薄汚れたこの街には綺麗な格好はすごく浮いてるように見えた。
みんなとは違う大人。僕にはそう見えた。
普通ではない人。
「僕、私たちと一緒にここを出ないか?」
その大人はおかしなことを言ってきた。
「君はまだ若いのに、ここでは十分な教育は受けれないだろう。」
きょういく?この人は何言ってるだろう?
「あんただれ?食べ物ならない。」
大人は、はははと笑った。
「あいにく、僕はお腹は減ってないな。」
「じゃあ、怒ってるの?ただで、殴られる気は無いよ」
今度は目を少し細めてくちびるをすこしきゅっと噛んだみたいなよく分からない表情をした。
「怒ってなんかいないよ。言い方を変えよう、僕と一緒に来ないか?」
一緒に来る?
「僕と暮らそう。3食昼寝付きだぞ!」
3食。なんだ、こいつなんで僕に食べ物を与えようとしてるんだ?
「とりやいず、僕に着いてきて。怪我の手当をしよう。」
僕は、他にすることを無いのでとりやいず男について行った。
「こんなに身体中、傷だらけで可哀想に。痛かっただろう?」
いたい?なにそれ。
「いたい?わかんない。でもなんか歩きにくいんだ。
動かす度に電気みたいなのが走るんだ。」
「そうか。」男は真顔だった。
だけど僕の顔は歪んでたと思う。
「さあ、終わったよ。お腹すいたろう何が食べたい?」男は笑顔でいった。
でも僕は、男を睨みつけた。
腹が立って気づいたら怒鳴りつけていた。
「そんなの知らわけないだろっ!気持ち悪いよあんた!」男は一瞬驚いたけどすぐに真顔に戻った。
僕は、怒鳴るのをやめなかった。
「僕になにがしたいんだっ!僕をなぐれよ!なにかあるなら!意味のわからないことはするな!」
男は僕の目線の高さまでかがみ僕に言った。
「君に、いいことを教えてあげよう。」
思ってもなかったことを言われたので僕は拍子抜けした。ぽかんと口を開けている僕を見ながら男は続けた。
「相手に手を伸ばすのは相手の気持ちが分かるからだ。だから僕は君を助けたい。」
僕の気持ちがわかる?助けたい?
「1回落ちつこう。暖かいご飯を食べるんだ。」
「わかった。大きな声を出してごめんね。」
男は、笑顔で細かいことを気にするやつはモテないぞといみのわからないことをいった。
「ここで待っててくれ、ご飯の支度をしてくる。」
そう言って男は僕に背を向けた。
僕はポッケからナイフを取りだし男の足に突き刺した。
男は僕の前で苦痛の叫びをあげながら倒れた。
床が濡れていた。
「僕の何がわかるって言うの?知った口をたたくな。」
男が僕に向かって手を伸ばしてきた。
僕はその手にまたナイフを突き刺した。
男はまた苦痛の叫びをあげた。
「嫌な奴だな。」
僕が胸を刺そうとナイフを振り上げる前に男は僕を抱きしめた。僕は驚いてナイフを床に落とした。
「ごめん、ごめんな。俺が悪かった。
もうこれ以上、自分を傷つけるな。」
何を言ってるんだろう、この人傷つけられてるのは自分の方なのに。
「傷ついてるのはそっちだろ。僕じゃない。」
「傷ついてるよ。だって君泣いてるじゃないか。」
僕が泣いてる?
「いいか?胸がきゅっとなって息がしずらくなったり目から水がこぼれたりする時そういう時を苦しいと言うんだ」
苦しい?僕が?
「そういう風になった時はな、自分に嘘をつくんじゃなくて素直になるんだ。そうすれば、俺が駆けつけてやるよ。」
僕は、叫んでいた。ずっと顔がびしょびしょに濡れているのも気にしないで。ただただ叫び続けた。
その間男はずっと僕を抱きしめていた。
その体は冷たいのになぜか暖かく感じた
僕までこの男みたいにおかしくなっちゃったのかな。
でも、嫌な気持ちにはならなかった。
僕も男を強く抱きしめた。何故か分からないけどそうしたくなった。
┈┈┈┈┈┈あれから5年後┈┈┈┈┈┈┈┈
「キアラ、留守番頼むぞ。」「任せて!」
僕は、あの男からキアラという名前貰った。
足と手の怪我は今は治り問題なく使えるようになった。
この5年で僕は色んなことを教わった。
人の気持ちや、自分の気持ち、字の書き方とかも。
今僕は、僕みたいな子のために勉強を教えるのが夢なんだ。
みんなの気持ちがわかる僕だからこそできる夢だとあの男は言ってくれた。
いつか絶対に助けるからねみんな。
あ、そうだ。ひとつ言いたいことがあるんだ。
この世で1番大切なものは名前なんだってよ。なんでって聞いたら愛情の証だからって、だから僕はこれから先出会う人の名前を忘れないって決めたんだ。
僕にくれた愛情を忘れないようにね。
🕊 𝕖𝕟𝕕 𓂃 𓈒𓏸 💗
11/27/2022, 12:58:32 PM