いちましろう

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太陽が1個しかないなんて、ぜったいに嘘だ、と空をにらみつけ、太陽の位置を確認してやろうとこころみたが、うまくいかなかった。眩しさで、瞼があがりきらず、白い光を下の地面へと受けかわすほかないのだった。えい、暑い、と心のなかでほえた。ああ、暑い、でもなく、うう、暑い、でもなく、えい、暑い、だったことが自分のなかでやや面白く、やや和んだ。蝉がジュクジュク鳴いていて、いますぐ氷をなめて溶かしたいと思った。いつもは氷を噛み砕くタチだけど、いまはしつこくなめたかった。太陽が2、3個あったら、もう喉さえ渇かないだろうな、と思い、その前に太陽がなくなるほうが先か、と思い、いったい何を考えているんだろう、と思った。向こう側のこどもが、じっとこちらを見ていた。

8/7/2021, 5:37:42 AM