シオン

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「どっちに飴が入ってるでしょーか」
 ボクは彼に声をかけて、両の拳を見せた。
 理由はもちろん、暇つぶしである。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯右?」
 彼は少しだけ考えてそう言った。
 言われたように右を開けばしこんだ飴が入っている。
「簡単に当てられちゃった〜、つまんないの」
 そう言うと演奏者くんは少しだけ微笑んで言った。
「勘だよ、勘。冴えてて良かったってだけ」
「まぁ、そうだね」
 ボクはそう言ってからその場を去る。
 十分に見えない所まで行ってから左を開けばチョコが入っている。
 彼が間違った方を言っても渡すものがあるように、なんて、我ながら少しだけ気持ち悪いかもしれないけども。

4/22/2024, 2:38:24 PM