clover

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広くて真っ暗な世界にぽつんと取り残された気分だった。

母親が作る朝食の音…
通学する学生の声…
キューブレーキをかける自転車の音…

いつもなら聞こえていた朝の音が、突然何も聞こえなくなった。


コンコンコン。

誰かが窓を叩く。

ゆっくりと窓を開けると、いつも見える風景ではなく、真っ暗な世界が広がっていた。


~生きるのが苦しい?~
~もう、生きるの諦める?~

頬に優しい風が吹くと同時に、子どものような、女性のような、優しい声が響いた。

「そっちに行ったら、楽になれる?」

~さぁ、それはどうだろ。でも悔いはないんだよね?…この世に…~


その声は本当に心地よくて、このまま身を任せてもいいと思えるくらいだった。

「後悔は…な…」


カンカンカンカンカン!!!

「いつまで寝てるの?!社会人にもなって親に起こされるなんて!」


え…え?

うっすら目を開けると、フライパンとおたまを持った母が仁王立ちになっていた。

なんでフライパン?昭和か…
体は動かなかったけど脳はハッキリ目覚めた。


夢オチで良かった…。
あれは死神だったのかな。夢にしては、生ぬるい風がやたらとリアルだったような気がすると思うと、ぶるっと身震いがした。


「もう1回、フライパン鳴らしてみて」

カンカン!

「変な子ね、早く起きなさいね」

ちゃんと聞こえる、朝の音。
まだやりたいことあるから
私大丈夫だから…

暗闇さんバイバイ。


※※※※

【お題】突然の君の訪問

8/28/2022, 12:02:41 PM