香草

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外部お題:「マリオ」

クラス替えという強制人間関係シャッフルイベントから1ヶ月経つと騒がしかった教室も段々と落ち着いてきた。
俺がその様子を冷静に傍観できたのは、相棒とも呼べる幼馴染と同じクラスになれたからだ。
母親同士が仲が良く小さい頃から一緒にいる時間が長かった。ほとんど家族みたいな存在だ。だから学校にいる時でも脱力してしまう。
「なー」
「あー?」
相棒は前の席に座りながら俺の机に突っ伏している。
俺はスマホを触りながら気のない返事をした。
「俺さあ、彼女できたっていったじゃん?」
「あー、この前の」
つい1ヶ月前に嬉しそうに報告してきた相棒の顔が蘇る。ウザかったな、あの顔。
入学式の時に一目惚れした女の子に勇気を出して連絡先を聞き、1年ほどかけてじわじわと仲良くなった結果、ついに付き合うことができたのだ。

「別れた」
「え?」
「別れた」
反射で相棒のつむじを見つめる。相棒はつむじをこちらに向けたまま微動だにしない。
いやいや、付き合うまで1年以上かかってたのに別れるのは一瞬てどういうことだよ。
「いやさすがに早くね?なんで?」
相棒が捨てられた側というのは聞かなくても分かる。
女を振れるような顔じゃない。
「あの3年の先輩いるじゃん?野球部のヤンキー」
野球部のヤンキー。目つきが非常に悪く、そいつに睨まれると気絶してしまうという異次元の噂を持つ。そいつを知らないものは学校にいない。

「彼女、アイツの妹でさ」
「マジかよ!」
俺が見かけた彼女は清楚で白百合のように可憐な女子だった。
それがヤンキーの妹?脳内で白百合とジャイアンがどう頑張っても結びつかない。
「デートの度に彼女迎えに行くんだけど、毎回アイツが出てくるんだよね」
「おう…」
確かにルンルンで彼女に会いに行ったら、目つきが悪いヤンキーの顔が出てくるのは寿命が縮むだろう。
「なんかピーチ姫とクッパみたいだな...」
「イヤッホゥ」
気の抜けた高い声と共に顔を上げた相棒の目には感情が灯ってなかった。

4/25/2025, 6:31:22 PM