化粧に興味がなかった私を、外に引っ張りだしたのは貴方だった。
「ねぇ、この口紅似合うんじゃない?」
「こんな色が濃いの、私に似合うかな」
「そんなに濃くないよ。これ、結構色控えめなんだよ。試しにつけてみようよ」
「えー、でも」
「定員さーん!試し塗りしたいんですけど!」
私の意見などお構い無しに、貴方は私の似合う色を沢山勧めてきた。
私は戸惑って、結局最初に勧められた口紅だけを買った。
今は社会人になって、最低限の化粧だけはするようになったけれど、貴方が選んでくれた口紅だけは、私の記憶にこびり付いて、離れなかった。
結局、今日新しいものを買おうと思って手にしたのは、貴方があの時選んでくれた口紅だった。
11/22/2025, 12:50:19 PM