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飛べない翼をもって生まれてきたもののことを
わたしは知っている

すべてのことには因果関係があり、説明がつくと考えている人々がいることも

彼らは「飛べない翼」を意味のないもの、つまりは存在しなくてもよいもの、と結論づけた
そして彼らにとって、「存在しなくてもよいもの」が「存在している」ということは、不都合な事実となった

彼らの全てが説明のつく完全な世界において、「飛べない翼」はノイズとなり抹消しなければならない対象となる

かたや、「飛べない翼」をもつものたちは自分たちがノイズであることを自覚していた
翼を隠したり、飛べると嘘をついたり、無駄とわかっていて飛ぶ訓練をしたり、とにかく自分たちに意味があることを証明するのに必死になった
そうしなければ排除の対象となるからだ

だけれども、その矛盾を考えてみると一つの答えに行きつく
なぜ、「意味のないもの」が「存在している」のか
それは「意味のないもの」ではなく「意味を知らないもの」だからだ

人の考えうる理屈など、この世界が存在しうるこの世の根底に大きく横たわる理屈からしたら、ちっぽけなものでしかない
意味のわからないものを壊すということは、自分たちが考えつかないような理屈に干渉するということだ

例えば、一万人に一人の割合で「飛べない翼」をもつものが生まれてくるとしよう
だが、そのルールを人々は知らなければ、人々の不安をかき立てるものして排除されるだろう
しかし、結果として排除した者の子供が「飛べない翼」をもつことになる

因果関係がわからないという事は、実に恐ろしいことだ

ただ実際はこんな単純なルールなど存在しない
複雑な網の目のように絡まった因果関係が、目に見えず存在している
正しいことは、簡単ではない

昔の人々は意味のわからない理屈を恐れ、敬い、「神」と名付けた
わからないものをわからないものとして、置いておく
そういうことにして、秩序のある自分たちの世界に居場所をつくったのだ

今の世に「神」の入り込む余地はなく、人自らが神になった
しかしそれと同時に「飛べない翼」を、そっと受け入れる知恵も失った

いつの世も、わからないことでいっぱいだ
神や悪魔たちは、今も笑っているのだろうか

11/12/2024, 8:41:02 AM