「ちょっと隣いい?」
「ん? うん」
屋上は風が吹いている。
「泣いてた?」
「えへ? 泣いてない」
「泣きたい気分?」
「そんなことないよ」
「俺は泣きたいな」
「なにそれ」
「今日さ」
「うん」
「ここに来る道で、サザンカが咲いてた」
「おー、寒くなるね」
「ね、あったかいごはん食べないと」
「だね」
二人は肩を寄せ合った。
「明日晴れかな」
「ずっと晴れだよ」
「そうなの? 雪、降らない?」
「東京の冬は、ずっと晴れだよ」
「そっか、よかった」
「なんで?」
「洗濯物、ずっと干せる」
「それは、よかった」
「明日お弁当作るよ」
「やった、楽しみだ」
「あ、でも、今日の残りものも入れていい?」
「なんで?」
「今日を思い出せるように」
「いいね、楽しみだ。…今日は、いい日だった?」
「うん。終わってみたら、きっといい日になる」
「それはよかった」
二人は向き直ってお互いを見つめた。
「ありがとうね」
「なんで?」
「いっぱい泣けた」
「泣いてないじゃん」
「んーん、ずっと泣いてた」
「そっか、じゃあ、よかった」
「うん」
「戻ろうか」
「うん」
そうして二人は部屋へと戻った。
11/28/2024, 1:01:38 AM