とある二人

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ぽたぽたと頭や肩に雫を感じてすぐに滝のような雨が降りだした。


「夕立だ」


畑仕事で空の様子に気付かなかった僕は慌てて物置小屋へ飛び込んだ。

先程まで晴れていたのに、あーあ、トウモロコシの収穫ついでに皮を剥ぐまでしたかった。

薄皮を残して茹でる方が僕としては美味しいと感じるし、そうしたいけど人数の多さにそんなこと言ってられない。
とにかく効率重視なのだ。


慌てて小屋に飛び込んでしまった僕は完全に手持ち無沙汰で、雨で濡れた袖口を絞りながらぼんやりと景色を眺める。


ざあざあと降る雨は昼前に干した洗濯物を色が変わる程ぐっしょり濡らしている。

洗濯からやりなおしだ、ああこの空模様からすると雨はしばらくやまないだろう。

ため息をつき視線をスライドすれば庭に片付け忘れられたのか転がったままの憐れなバケツが激しい雨に打たればちんばちんと音を立てており、その姿は僕の哀愁を誘う。




「まるで楽器だな」



いつの間にか僕のお気に入りの傘を片手に迎えに来てくれた普段無口で無愛想な君がバケツに視線を向けながら真剣に言うものだから、「君って可愛い事を言うよね」なんて言ってしまった僕は悪くは無いと思う。









空模様

8/19/2024, 10:55:23 AM