水晶

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『寂しさ』  

寂しさを感じた時ですか…そうですね…

忙しい両親に代わって私の面倒を見てくれた祖母は何でも出来るひとでしてね。そんな祖母の側で過ごす時間は本当に楽しかったのを覚えています。

その大好きな祖母が亡くなったのは私が高校2年生の春。身内の死を経験したのはそれが初めてだったのでそれはもう寂しくて寂しくて、暫くの間は沈んだ気持ちで過ごしておりました。茶の間で祖母が使っていた座布団を見るだけで涙が出る。切ない気持ちを抱えたまま過ぎる日々。

そんな生活も数ヶ月経ち、冬になる頃ようやく落ち着きを取り戻していきました。そしてふと思ったんです。
ああ、今年の冬は祖母の甘酒が飲めないんだなって。
いいえ、今年ばかりか来年も再来年もそのまた先も、もう二度と祖母の作る甘酒は飲めないのだと。
ひとが居なくなるとはこう言うことなのかと悟った時、私にまた新たな寂しさが込み上げてきたんです。

12/20/2024, 9:26:14 AM